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道央

森の出版社ミチクル編集者、山里PRプロジェクト「みる・とーぶ」代表 來嶋 路子さん【岩見沢市】

支え合う暮らし、分かち合う風景、届けたいストーリー

2011年岩見沢市へ移住。2015年にミチクル編集工房を立ち上げ、同市美流渡地区に転居した後、2018年に森の出版社ミチクルを設立。出版活動の傍ら、地域のアーティストらとともに、閉校になった校舎を活用し、地域に賑わいをもたらす活動を行っている。

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Photo Ikuya Sasaki

きっかけ

 2018年に「森の出版社ミチクル」という小さな出版活動を始め、3年後の夏に新たに「ローカルブックス」というレーベルを立ち上げました。著者が主体的に構想を練って、販売も共に行うという仕組みで、私は編集者として著者に寄り添いサポートを行っています。趣旨に賛同してくれたデザイナー、印刷所に協力してもらい、これまで2冊の本を出版しました。また、私が代表を務める団体「みる・とーぶ」では、閉校した美流渡中学校の校舎を芸術・文化の拠点として利活用するための検討と窓口となる業務を市から受託。昨年、美流渡地区に移住された画家のMAYA MAXXさんと一緒に、校舎をはじめ地域でのアートプロジェクトを展開しています。

苦労
 常に〆切を抱えている重圧があります。仕事が重なって大変なこともありますが、仕事を依頼してくださる方がいることはありがたいと思っています。本づくりの仕事も地域での活動も、内容は違えど根本的には一緒。人々の暮らしや活動を本や展示会という媒体で拾い上げて発信し、この地域の魅力をみなさんと共有できたらと思っています。私は以前、この地域に「エコビレッジをつくりたい」と考えてきましたが、自分がつくるのではなく自然に生まれるものではないかと考えるようになりました。自分が根ざす場所でみんなと協力しながら、様々な活動をしていくうちに緩やかなエコビレッジのようになっていくのではないか、そんな気がしています。
満足度

 MAYA MAXXさんの提案で、閉校した小中学校の校舎に設置された雪止めの窓板約40枚に絵を描くプロジェクトをスタートしました。すると、地域の方々が自発的に草刈りや掃除等に携わってくれるようになり、「アートの力によって地域に賑わいをもたらす」という思いが自然に、地域のみなさんにも広がり、沢山の方々の力によって、ひっそりとしていた校舎が蘇ろうとしています。また、校舎を丸ごと使い開催した「みんなとMAYA MAXX展」「みる・とーぶ展」には、札幌などで開催していた展示・販売会よりもはるかに多くのお客様が(たぶん多くの方は初めて?)美流渡に足を運んでくださったり、とても大きな反響をいただきました。

これから

 未来の目標は、これまでもはっきりとは決めずにやってきたので明確な答えはありません。が、本づくりに限れば、ローカルブックスの活動を更に続けていきたい。著者の方々が複数の本を出版できる環境づくりや、何よりも著者自身のペースを大切にした、小さな出版社だからこそできる活動を続けていきたいし、出版活動全体を通して言えば、普通に暮らす人々が織りなす小さな物語~それはとても魅力的なもの~をありのままで発信し、その地域の素晴らしさを伝えることができるような本をつくれたら、と思っています。校舎を今後、どのように継続的に運営できるか等も地域の方々と模索を重ね、また、展示会も毎年継続したいと考えています。

  • 來嶋さんイメージ1
  • 來嶋さんイメージ2

北の☆女性たちへのメッセージ

 コロナ下をへて、慣れ親しんだ身近な場所で何かを行うことがより重要になってきたと思います。都会で大規模な活動を展開するよりも、地域の中でのイベントや展示・販売等の企画等を、その時の状況に応じて、しなやかにやっていけたらと思っています。

 

取材年月日:
2021年10月18日