171

十勝

株式会社マドリン 代表 椛木 円佳さん【広尾町】

農業の世界で、女性はもっともっと輝ける

1983年広尾町出身。酪農家の家庭に生まれ、2003年にはカナダにて酪農実習を経験。2005年に帰国し、地元で就農。2007年に(株)マドリンを設立。2012年には農業女子会「SAKURA会」を立ち上げ、農業に携わる女性たちのコミュニティ形成に尽力。経営者として講演活動なども行う。

印刷用PDF

きっかけ
 酪農家の家に生まれたので、幼いころから牛があたりまえにそばにいる環境で育ちました。
子どもの頃は酪農の仕事を良く思えない時期もあり一旦は親元を離れましたが、誇りを持って働く両親を尊敬し、酪農家になろうと決めました。20歳で行ったカナダの牧場研修で女性経営者に会ったことが、特に大きな影響を与えてくれました。今の私があるのは、そのおかげと思っています。広尾に戻ってきてから、初めは父親の知り合いに土地を貸してもらって就農しましたが、今の場所に移転してからは、「私でも(女性でも)出来る酪農」ではなく「私にしか出来ない酪農」を目指してチャレンジしていこうと思い、日々頑張っています。
苦労
 2007年に牧場を立ち上げてからは、毎日が牛から勉強させてもらう日々です。特にはじめは偏見の目で見られたり、「女だから牧場経営は無理だ」などと厳しい声を掛けられることもありました。周囲に素直に受け入れてもらえない時期は非常に辛かったですが、それでも私には牛がいたので、「この子たちがいるから」という思いで続けてこられました。家族のサポートがあって就農できたので、「両親の前で弱音は吐かない」とも決めていました。それでも辛くなることはたくさんありますが、地域の農家の奥さんや、同世代の友人などからたくさん励ましてもらい、気にかけてもらい、支えられながらここまで来ました。
満足度
 私が就農した頃は、農業やそれに関連する仕事に女性が携わっている例は少なかったように思いますが、最近は獣医さんにしても資材屋さんにしても、女性が少しずつ増えてきているのを感じます。それでもまだまだ女性は「影で支える」というような風潮を感じるので、それを変えていきたいです。私の周りにも「私なんて大したことない」と謙遜する女性が多いのですが、そうではなく、もっともっと女性が表に出て良いと思います。本来なら、男女関係なく誰もがやりたいことをやれるような世の中が理想だと思うので、これまでの慣習にとらわれず、農業の世界も価値観をアップデートしていかなくてはならないと思っています。
これから
 まだまだ酪農というとあまり良いイメージを持ってもらえないことも多いので、一般の人にも「酪農っていい仕事だな」と思ってもらえるために活動していきたいです。私の牧場には長期休みを利用して学生さんが研修に来たりしているのですが、そういう経験の場に、「将来は酪農家になる」と決めた人でなくとも参加してもらいたい。将来のビジョンが若いうちからハッキリ決まっているのは素晴らしいことですが、視野を広く持ち、あまり決めつけすぎないというのも大事だと感じるんです。色々な視点を持って、壁にぶつかっても別の選択肢を選べるようなしなやかさがあれば、どんなことがあっても自分らしくいられると思います。

北の☆女性たちへのメッセージ

 女性は、目標達成のために現実的な道を考える力を持っている人が多いように感じます。大きな夢を語らなくとも、高いエネルギーを持って何かを実現させている人はたくさんいます。それぞれの人が自信を持って生きられるよう、私も自分の仕事を通して少しずつ変わっていきたいです。

取材年月日:
2024年2月