167

道央

㈱ジューヴル 代表取締役 池添 幸子さん【岩見沢市】

就労継続支援の在り方をアップデートするために

1980年三重県出身。大学で心理学を学び、精神疾患や不適応を抱える人をサポートしたいと考えるように。NPO法人で支援員や管理者として勤務したのち、2017年に㈱ジューヴルを創業。就労継続支援B型の事業所としてPatisserie sorakaで地元の素材を使ったスイーツを開発、販売。

印刷用PDF

きっかけ
 私自身が思春期に悩み事を抱えやすかったことや、友人が人間関係で辛い思いをしているのを目にし、悩みを誰かに話すことの大切さや、それを専門の仕事にしている人の存在を知り、その業界を目指しました。大学では心理学を学び、実際の現場を知ろうとNPO法人に入り障がいを持ちながら地域生活を送る人たちの現状を目の当たりにし、彼らに寄り添うような仕事をしたいと考えるように。精神保健福祉士の資格も取得しました。しかし既存の仕組みで決められている、障がいのある人の物づくりの工賃では彼らの経済的自立は難しいという現実にぶつかりました。そんな現状を変えるべく、先進事例を学び、起業しました。
苦労
 自分の人生の中で、まさか起業することになるとは考えていなかったので、経営の知識や資金の準備もままならないままスタートしてしまいました。最初の一年は資金繰りだけではなく、初めての経理や総務、人事などのマネジメント業務に追われながら、従業員にやっとやっと給料を支払うような日々でした。あの頃の辛い気持ちは7年経った今でも鮮明に覚えています。今では、ありがたいことに全国の販売会に商品を持って行くことができるようになり、今度は製造ペースや品質を安定させることに苦心しています。それでも、大きな物産展などにもお声がけいただけるようになったことはありがたく、非常に嬉しく思っています。
満足度
 仲間に助けられながら、7年間右肩上がりに黒字経営を続けてくることができました。その点においてはまずホッとしています。一番の喜びは、利用者さんが自己実現できている姿を目にしたとき。たとえば、出来る仕事が増えて満足そうな表情をしているときや、家族から離れて生活することができて安心と自信の表情を見せてくれたときなどです。障がいのある人に経済的に自立してもらいたいと考えて起業したので、彼らに支払う工賃を毎年引き上げることができているのは達成感があります。とはいえ、雇用されている方との賃金差はまだあるので、そこを埋めていけるよう、さらに経営努力をしていきたいです。
これから
 1人でも多くの障がいのある方を「雇用」していける企業体力を付けたいと思っています。目指すは20名の雇用。また、最近ではPatisserie sorakaのグルテンフリースイーツが高く評価いただけるようになってきたので、海外への出荷も考えてみたいと思っています。企業理念に「福祉を理由にしない」と掲げている通り、就労継続支援事業所だからといって一般の流通と違うものを作るのではなく、質・量ともにプロとしてお客様に買っていただける商品を作り続けたいです。今も適材適所で、特技を活かす働き方を取り入れていますが、今以上に、利用者さん自身も自分の仕事に誇りが持てるような会社にしていきたいです。

北の☆女性たちへのメッセージ

女性の強みは「想い」が原動力になるところだと思います。事業をするには分析や計画も必要ですが、何より「想い」に勝ることはないと思うので、何かをやりたいと考えている人は、ぜひチャレンジしてください。誰かのために頑張れることは、とても幸せな人生だと思います。

取材年月日:
2024年2月