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道北

Mt.ピッシリ森の国株式会社取締役 農業・写真家 宮原 光恵 さん【幌加内町】

唯一無二の地で、心豊かなくらしをつくり、伝え続ける

1962年生まれ、標茶町出身。1995年に家族で幌加内町朱鞠内地区に移住し、1997年就農。大規模農業を営みながら、有機栽培の拡大に取り組む。2017年より、WWOOF(World Wide Opportunities on Organic Farms~世界に広がる有機農場での機会)のホスト会員となり、有機農業体験の受入を行っている。

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きっかけ
 幌加内町で農業を始めて26年になります。新規就農時、農業関係者に「この地で有機農業を始めたい」と相談したら、「ここでは絶対に無理!」と口を揃えて言われました。本当に奇跡的に生き残れていると思う位、何度もピンチに見舞われながら、必死にここまでやってきました。2017年よりWWOOFホストとして、有機農業体験を受け入れるようになり、コロナ前は、世界中からたくさんのボランティアの方々が来てくれていました。そして農業だけでなく、生き方や価値観について語り合い、情報交換や文化交流を通して、世界中にたくさんの友人ができました。彼らが残していってくれる絵、レシピ、手紙などは、我が家の宝物です。
苦労
 ここ幌加内町朱鞠内は、とても雪が多く、とても寒い所です。周辺地域と比べても早く積もり、雪解けも遅く、1年のほぼ半分の間、積雪があります。道内の人ですら驚くほど雪の多いこの地で、何のノウハウもない私達が有機農業を行うのは、あまりに無謀と言われましたが、やはり安全安心な作物を作りたいという思いは強く、色々な人に助けられながら、何とか続けてきました。数年前、息子が戻ってきて、一緒に農業をするようになり、有機栽培の作付けを徐々に増やしています。輪作体系の一環として、有機そばの生産も始め、2021年から十割そばの乾麺の販売を始めています。
満足度
 海外では日本よりオーガニックへの関心が高く、コロナ前に受け入れたボランティアの9割が外国人でした。彼らから、自分の国の様子や価値観、教育などについて話を聞き、また、野菜を使って得意料理を作ってくれて、レシピも教えてくれるので、まるで世界を旅するかのように、色々な国の食や文化、知識に触れることができ、まさに「世界がうちへ来てくれる」といった感覚で、とても豊かで楽しい時間を過ごすことができます。そして彼らのWWOOFサイトへの書き込みを見た人がボランティアに申し込んでくれるなど、人と人との輪につながっていくこの取組をこれからも続けていきたいと思います。
これから
 私達にとってこの土地は、唯一無二の素晴らしい場所で、豊かに暮らせるあらゆるものが揃っていると感じています。厳しく激しい自然ではありますが、ここの自然を生かし、暮らしを積み上げて、豊かな生活文化を構築していきたい。ここへ来る若者達の多くは、現代の価値観に違和感を抱いているように感じます。そんな彼らに、農作業や交流を通して、私達の思いや、目指す暮らしについて伝えることで、彼らの人生が次のステップに進むためのヒントになればと思っています。私個人としては、教えてもらった世界のレシピを使い、有機野菜で加工食品の製造を目指し、実現できるように勉強しているところです。
  • 宮原さんイメージ1
  • 宮原さんイメージ2

北の☆女性たちへのメッセージ

大切なことは、今やっている!これからやりたい!少し行き詰まったなど、様々な場面で、一歩引き、全体を見渡し軌道修正をすること。環境や価値観の違う世界を覗いたり、話を聞いたり、あるいは、ボーっと風景をみながら静かな時間を持つのもお勧めです。

取材年月日:
2022年3月9日