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道央

砂川市立病院 認知症疾患医療センター長  内海 久美子 さん 【砂川市】

地域で認知症を支える「砂川モデル」を全国へ

1955年生まれ、旭川市出身。北大教育学部卒業後、児童精神医学を学ぶため札医大に入学し、卒業後に同大附属病院精神科に就職。そこでアルツハイマーの研究に触れたことを機に、認知症の研究を続け博士号を取得。1996年から砂川市立病院に勤務し、2010年から現職。砂川市内で夫、ペットと共に暮らす。

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きっかけ
 当院で2004年に「もの忘れ専門外来」を開設したことをきっかけに、医療だけで認知症の方を支えることは難しいと感じるようになりました。認知症の方の生活全体を支えるには、まず地域の介護スタッフの協力が必要であると考え、「中空知・地域で認知症を支える会」(現在はNPO法人)を立ち上げました。認知症の方を多くの目で見守り、早期に必要な治療や介護サービスにつなげるため、介護・保健・福祉の各分野の方々と連携するとともに、市民や地域の介護スタッフ向けの啓発講演会や研修会、ご家族への支援等を行っています。また、当院での認知症の診察は、脳神経外科、神経内科、精神科が連携して実施しています。
苦労
 苦労は、あまりありませんでした。地域の介護スタッフの方々は、認知症の正しい知識があまりない中で対応を求められ、困惑していたところに私たちが「一緒にやりましょう」と声をかけたので、抵抗なく受け入れてくれました。強いて言うなら、医師同士の連携が難しかったですね。他院の医師に「もの忘れ外来の相談医になってください」と依頼しても、なかなか了解を得られませんでした。患者さんがもの忘れ外来を受診する時は、かかりつけ医の紹介状が必要なのですが、書いてくれない医師もいました。そのような時は、私の方から手紙を書いて協力を依頼し、今では55の医療機関に相談医がいます。
満足度
 地域での活動を通じて、住民の方、家族会の方、ボランティアの方、介護スタッフの方など多くの方々と出会い、思いを共有できる仲間ができました。医者って、病院の中にいると案外孤独なんです。患者さんやご家族から「助かりました、ありがとう」と言っていただけると励みになり、この喜びを仲間と共有できることが嬉しいですね。みんなががんばっているから、自分もがんばろうと思います。様々な職種の関係者が参加する「多職種事例検討会」を2か月に1回開催していますが、毎回参加希望者が多く、地域の熱気を感じます。顔を合わせることで関係者同士が繋がり、連携したケアができていると思います。
これから
 認知症の方を地域で支える上で、特に重要な役割を果たしているのは、ボランティア団体の「ぽっけ」です。病院や行政では手の行き届かない部分の、患者さん一人一人に合わせたきめ細やかなケアが「ぽっけ」では可能です。このようなボランティア活動を含めた「砂川モデル」が、全国に広がってほしいです。これからやってみたいことは、子どもと高齢者がふれあう多世代交流の場づくりですね。認知症の方や家族が集まる「認知症カフェ」を常設にして、子どもや地域の方々も気軽に交流できるようになればいいなと思っています。
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  • 内海さんイメージ2

北の☆女性たちへのメッセージ

私のモットーは「何もやらないより、ダメでもともと、ダメモトでやってみよう!」です。失敗しても、必ず得るものはあります。「立ち止まるより、歩きながら考えよう」、そんなふうに思って、やってみませんか?

 

取材年月日:
2016年7月27日