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十勝

ばんえい十勝 調教師 谷 あゆみ さん【帯広市】

北海道の伝統文化をしっかりと次世代へ

1966年生まれ、奈良県出身。帯広畜産大学卒業後、牧場に就職。その後、ばんえい競馬のきゅう務員として就職、2005年に調教師試験に合格。2006年、谷きゅう舎を開く。2012年に出産し、1児の母に。競馬場のきゅう舎で馬とともに生活を送る。

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きっかけ
 午(うま)年生まれで、子どもの頃から馬の絵ばかり描いていて、自然と馬が好きになっていました。大きな動物を飼いながら絵を描いて暮らす生活に憧れ、大学進学で北海道に来ました。学生時代に、先輩に誘われて行った牧場でシンザンと出会い、卒業後、その日高管内の牧場に就職しました。牧場勤務時代にばんえい競馬を知り、そのダイナミックさに夢中になりました。1993年にばんえい競馬のきゅう務員になり、その後、周囲からの勧めもあり調教師の試験を受け、合格しました。
苦労
 日高管内の牧場に就職した時、きゅう務員時代、そして調教師になってからも、女性は珍しい存在で、完全な男社会の中で過ごしてきました。ばんえい競馬のきゅう務員になってからは、理不尽な事に対しては言い返せるようになり、「地震、かみなり、谷あゆみ」と言われていましたね。きゅう舎を構えた時も、「女のくせに」という見方もあったと思います。女だから技術的に劣っていても仕方ないと言われたくないと思っています。母親としては、子どものことだけに集中しきれない環境なので、申し訳ないという思いがあります。
満足度
 2006年に馬5頭、きゅう務員さん1人という体制で谷きゅう舎を開業しました。今は、馬20頭、きゅう務員さんは5人になりました。調教師としての技量、きゅう舎の経営や成績など、まだまだ満足はしていません。3歳半になる息子が居ますが、出産してから自分が思うように仕事に携われなくなった時に、経営不振に陥りきゅう舎を畳むことも考えましたが、優秀なきゅう務員たちに支えられ、続けることができました。今は、徐々に、谷きゅう舎の名前も知られ、馬主さんから信頼を得られるようになってきましたが、まだまだこれからですね。
これから
 きゅう舎としては、重賞レースの優勝馬を輩出できるきゅう舎を目指していますが、まずは、きゅう舎1棟に24頭入れるので、それを埋めたいと思っています。ばんえい競馬に携わる者としては、世界唯一の北海道の大切な馬文化を、私たちの世代で終わらせたくない。「バンバ」の血筋は、開拓時代から脈々と受け継がれてきたもので、この血筋が一旦途切れると、復活させるのは大変です。しっかりと守り、次の世代に繋いでいきたい。母親としては、子どもが物心ついた頃にも、現役の調教師としての姿を見せたい。そう思っています。
  • 谷 あゆみさんイメージ1
  • 谷

北の☆女性たちへのメッセージ

「継続は力なり」です。頑張り過ぎずに、目の前の事、自分の出来ることを「とつとつ」とやる。そうすることで、周りからの信頼も得られていきます。頑張り過ぎると、ある日、突然糸が切れてしまうこともあるかもしれません。頑張り過ぎず、自分のペースで進むことが大切だと思っています。

取材年月日:
2015年11月27日