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道南

旅館よ志栄 岩田 良子 さん 【上ノ国町】

祖母や母に感謝し、地元の伝統の味を次の世代へ

1941年生まれ、上ノ国町出身。地元の中学校を卒業後、家業のサイクルショップを手伝い、1964年に食堂を開業。1974年から旅館業に事業を拡大し、開業時から地元の伝統料理・伝統の味を守ってきた。上ノ国町商工会女性部長や上ノ国町観光協会会長を歴任。

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きっかけ
 22歳のとき、妹と一緒に12坪の小さな家で食堂をはじめました。何もわからず母から教わった地元の料理を提供してきましたが、流行の料理より伝統料理の方が、地元のお客様に喜んでいただけることを当時から感じてきました。後に宴会料理も提供できる20坪の小料理屋を始め、1974年に増築して旅館業も始めました。「ひやまの郷土食を食べてもらう会」メンバーとしても活動しています。3年前に妹が体調を崩し、息子のお嫁さんとお店を営業しており、いずれは伝統料理や接客のことを教えて、お店を継がせたいと考えています。
苦労
 親が経営していたサイクルショップが経営難で廃業となり、借金が残った状態で高齢の両親を養うため、22歳で商売を始めました。何もわからず、お客様に助けられたことが多々あり、今でも感謝しています。両親の在宅介護は、昔の時代では当たり前で苦労と感じませんでしたが、今想えば、商売をしながらの介護はとても大変でした。親を特別養護老人ホームに入所させてもらう際には、「親を粗末にするな」と言われたこともありました。また、息子は友達から水商売の子とからかわれて嫌な思いをしたこともあるようです。
満足度
 お客さんから料理を美味しいと評価されたときが一番嬉しいです。振興局の職員の方がお店に興味を持たれ、伝統料理に着目して食のイベントなどにお誘いいただく機会がありました。後に、それがホームページで紹介され、2年前には観光雑誌の取材もあり、掲載されてからは、地元以外の遠方からの観光客もたくさん来店されるようになりました。平成20年には「北海道らしい食づくり名人」に登録され、平成22年にはホスピタリティの向上や観光振興への貢献として知事感謝状をいただいたことも大変励みになりました。
これから
 これからも伝統料理にこだわってお店を続けていきたいと思います。インターネットをご覧になった方や遠方のお客さんから、作り方を教えて欲しいと言われることがあります。ですが同じ材料があっても本物の味を出すのは無理ですよと伝えます。特に発酵食品などは温度管理などが難しいです。伝統料理はレシピに頼らず、人から人へ伝承してはじめて本物の味が出せるものです。今があるのは祖母や母のおかげと感謝しつつ、次の世代に伝統料理を伝えていきたい。今後も息子のお嫁さんと一緒に、お客さんに喜んでいただけるよう頑張ります。
  • 岩田さんイメージ1
  • 岩田さんイメージ2

北の☆女性たちへのメッセージ

女性ならではの気配りは、まわりの空気を和ませることができます。イベントなどでは、お手伝いしてくれた方々のために、さりげなく、おにぎりなどを準備しておくと、皆さんから「胃袋をつかまれてるぞ」と笑いがこぼれます。人それぞれの個性や感性を大切に。

取材年月日:
2016年11月24日