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道東

手づくりクレヨン工房 Tuna-Kai 代表 伊藤 朋子 さん【標茶町】

自然素材のクレヨンでみんなに笑顔を届けたい

1966年生まれ、岡山県出身。帯広畜産大卒。北海道での農業に惹かれて、道内で農業改良普及員となり、農家を目指すも断念。転職後に草木染めに興味を持つようになり、100パーセント自然素材のクレヨン制作の研究を進め、2008年に自ら工房を立ち上げ、2012年から一般販売を始める。

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きっかけ
 北海道の農業に憧れ、帯広畜産大に進学し、卒業後に農業改良普及員になりましたが諸条件が噛み合わず、農業を断念。転職して草木染めの講師をしていた時、1人の少年に出会いました。彼は化学物質アレルギーがあり、市販のクレヨンや絵具が使えず、色を使った絵が描けないことを知りました。この少年に思いっきり好きな色で絵を描いてもらいたいとの思いから、染色技術を応用した自然由来のクレヨンをつくるようになりました。
苦労
 工房は、標茶町の老朽化し閉鎖していた旧青年会館を町役場から借りることにしました。家賃は格安でしたが、設備面の修復に苦労しましたね。それでも地元の方々が親身になって手伝ってくれて、小さな工房が完成。みなさんには本当に感謝しています。顔料は、地域に自生しているヨモギやタンポポ、ドングリなども使います。そのため鮮やかな色が出にくく、さらに時間が経つと固くなって描けなくなるなどの課題も。それでも試行錯誤を重ねながら、ようやく商品化することができました。
満足度
 手間ひまをかけているので、各商品とも高価になってしまいますが、東京都など首都圏の百貨店でも販売できるようになりました。購入されるのは、孫の誕生や入学祝いに購入される高齢の方が多いですね。自然の草木や土、貝殻などから煮沸して色を取り出し、それを蜜蝋に混ぜてクレヨンに、アラビアゴムを混ぜて絵の具に仕立てます。この取り組みに賛同してくれた画家やイラストレーターが、当工房のクレヨンや絵の具を使って、それぞれ得意分野の絵を描いてもらい、小さな個展を開くようになりました。
これから
 「Tuna-Kai」はアイヌ語でトナカイを意味します。息子が4歳の時にパソコンで描いたトナカイの絵をロゴマークとして使っています。Tunaは「ものを運ぶ」、Kaiは「家畜」が語源。みんなに笑顔を届けるトナカイでありたい、そんな想いを込めています。クレヨンと絵の具の顔料は20種類を超えました。もっときれいな色が出るよう研究を重ねると同時に、クレヨンや絵の具を使った個展も引き続き、開催していきたい。今春には、知床財団とコラボした「ヒグマ足跡パレット」を販売する予定で、準備を進めています。
  • 伊藤 朋子さんイメージ1
  • 伊藤 朋子さんイメージ2

北の☆女性たちへのメッセージ

手づくりのクレヨンは、1つ1つに個性があります。草木を煮沸する時間によって、発色具合が微妙に変化します。これって子育てに似ているのかな。子どもの個性を伸ばしてあげたい、そんなお母さんの気持ちって大切ですよね。

取材年月日:
2016年2月18日