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道北

画廊 有限会社ギャラリーシーズ 代表 久木 佐知子 さん【旭川市】

地域にアートの「種」をまき、人々を感動に誘(いざな)う喜び

旭川市出身。1991年4月、旭川市内に画廊「ギャラリーシーズ」を開廊。旭川美術振興会理事、中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館協議会委員等を歴任、現在も旭川市文化賞選考委員などを務め文化面から地域振興に尽力。家業は大正13年創業の餅菓子店「一久大福堂」。

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きっかけ
   アートに巡り逢えた喜び、表現者たちの思いが自分の目に焼きつけられていく魂が震えるような感覚。美術鑑賞を重ねるにつれ、こうした感動がその場、その時だけのものではなく、普遍的で、時を経ても色あせないものであると知りました。そんなアート体験が画廊「ギャラリーシーズ」を開廊した原点です。「シーズ」には二つのメッセージを込めています。一つは「女性たち=Shes」という意味、そしてもう一つは「種=Seeds」。この地にアートという種をまきたいと走り続け、気がつけば開廊26年となりました。
苦労
 表現者ではない私がまく「種」は、表現者をご紹介し、皆様に美術を身近に感じていただけるよう、力を尽くすこと。国内外の優れた作家の個展やその都度テーマに定めて展示する企画画廊にしたのも、そんな思いからです。でも、北海道の、しかも地方都市(旭川)の小さな画廊で企画展を開くことは想像していた以上に大変でした。アートマーケットが小さいというハンディもあります。作品展に合わせて作家のトークショーや作家を囲んでのレセプションパーティなどの取り組みを通じて、人と美術の出会いを演出してきました。
満足度
  「シーズ」の展覧会で、80代の男性が、藤田嗣治(レオナール・フジタ)の絵の前で立ち尽くしていました。別の展覧会では、車いすの女性が「学生の頃に観た」という絵に心を奪われていました。画廊を訪れる人たちのそんな姿を目にするたびに、この仕事をしてきて本当によかったと思います。日常の慌ただしさに紛れて忘れてしまっていた感動が、アートに触れることでよみがえることがあります。多くの人たちをそんな瞬間に誘(いざな)うお手伝いができる、その幸せ! 
これから
 この地域に育てられたので、地域のためにできることを模索しています。2000年にスタートした「旭川彫刻フェスタ」の取り組みもその一つ。彫刻を街づくりに活かすとともに、市民の皆さんがアートに親しむことで、それぞれの心に沢山の引き出しを持ってもらえたらと願っています。「人と違うこと=個性」はアートの大きな価値です。アートを通して、一人ひとり違った考え方や生き方があっていいのだ、と肌で感じてほしいのです。今後もこの街にアートの種をまき、育てていきたいと思っています。
  • 久木さんイメージ1
  • 久木さんイメージ2

北の☆女性たちへのメッセージ

   “希望を天の星につなげ” 書家・中野北溟先生の作品で、私の好きな言葉のひとつです。どんなことも熱意を持って臨めば叶うことを信じて、恐れずに第一歩を踏み出してみてはいかがでしょう。夢をかたちあるものに・・・。

 

取材年月日:
2017年11月1日